ネリン川のレノック、オヤニラミ

日時: 2009年9月25,26日

場所: 江原道、

参加者: ジョーさん(非会員)、ウォンバット(文責)

レポート: 待ち焦がれていた釣りに遂に行く。 レノック、オヤニラミ、日本にはいない韓国固有の釣り。
一度釣りに行ってみようとは思ったものの、案内してくれる人のいないソウルの状況の中、果たそうとして
果たす事が出来なかった。

レノックとは和名コクチマス、中央アジアからシベリア、樺太にまで生息するマス族だ。 かって開高健や
西山徹などの釣り人が、モンゴルでタイメンやカムチャッカントラウトを狙う時、必ず掛かっていた魚である。
韓国はその南限に当たっており、大物は出ないが40センチ程度のものまでが生息しているらしい。
韓国名をヨルモゴ、と言う。

オヤニラミは正式には高麗オヤニラミと云い、九州に生息するオヤニラミとは別種の魚と云われる。 日本の
オヤニラミはとても小さい魚だが、韓国のそれは最大30センチくらいまで成長する。 韓国名コクチ。

2種共に獰猛なフィッシュイーターであり、ルアー、フライの対象魚である。 川の上流の清冽な水に住むが、
レノックの方が低水温を好み、オヤニラミはより高水温で活性が高い。 自ずと上流、下流に住み分けることになる。

同行者は、昨年から親しくなった韓国のプロの釣り師、ジョーさん。 この人、本職はテキスタイルの関係で博士号
を取ったれっきとした大学教授。 ただし、大学のほうは開店休業の状況で、同じく大学教授の肩書きを持つ
奥様に、稼ぎの方は全面依存。 釣りの本への執筆、ロッドの製作などでお金を稼いでは、オーストラリアや種子島の
GT,モンゴルのタイメン等に出没する。 釣り師としてこれ以上ないほど羨ましい環境である。


25日の金曜日、PM6:00にソウルを出発、一路江原道のネリン川、美山渓谷を目指す。 ソウルを抜けるまでの渋滞で
1時間近くロスしたが、その後は最近出来た高速道路のお陰で、PM9:30には渓谷沿いの小さな村に到着した。
民宿を探して、素泊まり2万Wonという破格な値段で一泊する。

翌日は朝靄の中、紅葉が色づき始めた美山渓谷で釣り始める。 タックルはウルトラライトのロッドに自分はミッチェル
309、ジョーさんはABUカージナルに4ポンドのナイロンライン。 ルアーはダイワの輸入しているマイランのパンサー3g
が急流での安定が良いそうで、持参しなかった自分はジョーさんに頼る事になる。 ブレードはレノックには圧倒的に
シルバーが良いそうだ。


確かにスピナーのパンサーは、ゴロタ石の間を流れる急流の中でも、きれいに沈んで動いてくれる。 ブレードの回転も文句なしだ。
幾つかポイントを変えて、大岩が両岸からせり出して急流となっている流れを、下流から上流にレトリーブしていた時、
出し抜けに良型が飛び出した。


永年の憧れだったレノックに会えて、しばし魚体に見惚れる。 ニジマスやヤマメと比べ、体高が低く、円筒型の魚体は
タイメン等と同様か? サルモニード特有の脂鰭はきちんと付いているが、上あごがややせり出した形の唇は良型のハヤ
に似ている。  ただし急流からスピナーを猛然と襲ったスピードは、明らかにフィッシュイーターのそれである。


一級のポイントを自分に譲ってくれ、後から釣り上がったジョーさんにも待望の一匹。 オールドリールの収集でも一家言のある
ジョーさん、本日は懐かしいABUカージナル3やALCEDのリールを持ってきている。 自分も昔懐かしいミッチェルの309で
釣りに臨んでいる。 韓国の釣り師で、これ程スポーツフィッシングを楽しんでいる人も珍しい。


その後、水量の少ない開けた渓谷に出た為、ルアーからフライに変更する。 #3のラインには少し強めのロッドを選んで
ラインスピードを上げる。 フライはこれもジョーさんの推薦を得て、エルクヘァーカディスの#12。


9月も後半になり、水温もかなり下がった、と思って当初は川の開きを狙ったが当たりは無かった。 ポイントを変えて
浅瀬のゴロタ石回りを狙うと元気な魚信。 


先ほどのような良型ではないが、20センチほどの可愛いレノックが2本、立て続けにヒットした。


まだ魚は瀬に付いているようだ。 その後良型を1本バラした後は、日も高くなり、当たりが次第に遠のく。
「下流に行ってオヤニラミを狙ってみましょう!」とジョーさん。  本当に感謝してます!!

オヤニラミは形だけでなく、習性も海のソイやカサゴに似ていて、岩の回りや下に付くのだそうだ。
ただし既に水温が低下してきているので、「出るかどうか保障は出来ません」たはジョーさんの見立て。

ところが、自分が数投したウルトラライトがグンッと撓って、25センチほどのオヤニラミが掛かってしまった。
ルアーはスティングシルダの3gシルバー、ゆるい浅瀬を探るので、よりブレードの大きな、回転主体のスピナーを択んだ。


この大きさの魚の価値が判らない自分に代わって、ジョーさんの方が興奮している。 普通オヤニラミは20センチ以下が
中心で、このサイズはめったにお目にかかれないのだそうだ。 今日は何と運の良い日だろう。

この魚の鰓蓋には、大きな黒い斑点が浮いている。 これが目に見える為に、「オヤニラミ」という異名を頂いているのだが、
よく見ると、緑のソイという感じで、川の魚には到底見えない。 昔釣ったソガリ(高麗ケツギョ)に似て、日本では通常見られない種類の
川魚だ、と思う。


その後、オヤニラミ釣りはジョーさんの予想に反して絶好調。 1時間ほどで大小あわせて7匹を釣る事ができた。 ジョーさんと
合わせると10を超える。

8時から釣り始めて午後2時、数を釣るのが目的ではないので、日の高いうちに早々に納竿する。 これ程狙いの当たった日は
少ない、とジョーさんも大喜び。 自分も念願の魚が釣れて、大満足の一日だった。

殆どの魚はリリースしたが、初めての魚を味わう為、レノック、オヤニラミを2匹ずつキープしてソウルに持ち帰って食べてみた。
レノックは癖の無い白身で、ヤマメとマスの中間のような味で美味しい。 オヤニラミも白身だが、こちらは弾力があって、目をつぶって食べれば
これが川の魚、とは信じられなかった。 ソイやカサゴを食べている感じ。

韓国の渓流は豊穣だが、此処にも開発の嵐が・・・・ 至る所に洒落たペンションが建ち始め、ジョーさんに言わせると川の水が
3年前とは比べ物にならないほど汚くなった、とか。 昔はジンクリアウォーターで、そのまま飲むことも出来たのだそうだ。

それでも、道路にはひっきりなしにリスが走り、川原にはカワウソの足跡や糞が沢山あった。 このまま自然が残ってくれるのを
期待するのは、都会から来た人間のエゴなのだろうか? あと一月すれば、錦秋の美山渓谷、観光客で埋め尽くされる筈だ。

(終)
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